母と離婚した父が共有している不動産、相続はどうなる?

ご相談者様は、姉・弟の二人姉弟。
姉弟仲はよく、日ごろから情報共有をしておられるとのことで
当日もお二人でお越しになりました。
「親の相続税がいくらぐらいになるか試算しておきたい」
という目的でのご来訪です。

「親」とは、現在、お元気でいらっしゃるお母様のこと。
複数の不動産が財産となることから
元気なうちに家族で相続について話し合い、
可能なら節税を検討したいとのご希望でした。

ところが、調べていくうちに
円滑な相続に立ちはだかる、やっかいな問題が見えてきたのです。

相続税額そのものは、予測より低くなるケースが多いのが一般的。
ただし、財産の権利関係をみると、意外な問題に出会うことも。

お母様の財産は預金、有価証券、複数の不動産とのこと。
預金、有価証券は、現時点での金額が明らかですので
相続税評価額はすぐに試算できました。

不動産は
お母様が所有する賃貸住宅とその敷地
お母様と娘(ご相談にみえた姉弟のお姉さん)が共有する住宅とその敷地
お母様と息子(ご相談にみえた姉弟の弟さん)が共有する住宅とその敷地
お母様と30年前に離婚した元夫(ご姉弟の父)が共有する土地
の4件で、相続税評価額については、その状況と面積から
試算することができました。

試算額は、ご姉弟が予測しておられた額より低くおさまり
お二人とも胸をなで下ろしておられました。
専門知識をもって試算すると、懸念するほどではないというケースは
案外多いので、私どもはご相談をおすすめするのです。

今回、新たな問題として浮き彫りになったのが、
お母様と離婚されたお父様が共有している土地のことでした。
立地等の条件により、非常に評価が高いのです。
お母様が亡くなられた後は、登記簿に記載されているお母様の所有割合分が
姉弟の相続分ということになりますが、
建物・土地を具体的にどう分けるかでトラブルが生じる場合があることも
念頭に置く必要があるでしょう。

お母様は所有を主張しておられないとのことですが、
別れたお父様に売却するのは困難な状況とのこと。
問題は思いのほか大きそうです。
ひとまず相続税の観点から、
ご両親がご存命の間に、その不動産の所有について
すっきりさせておいたほうがいいとアドバイスいたしました。

今回のご相談では
解決の明確な糸口が見えるまでには至りませんでした。
しかし、ご相談者様には
「これまで漠然と意識していたものが意外に重荷であること、
早い時点で解決しておく必要があることがわかり、
次にすべきことを話し合うきっかけができた」
と、喜んでいただきました。

特例などを使うことで可能な生前対策は?

不動産の相続については
「小規模宅地の特例」
「住宅取得資金の贈与税が非課税となる制度」など
減額特例や非課税制度をタイミングよく利用して
相続税や贈与税の負担を軽減することが可能です。

ご相談者様も、日ごろからよく勉強しておられ
これらの制度を利用できないかご相談を受けました。

まず、小規模宅地の特例については原則、同居親族が対象となるため、
今回のケースでは、お母様と同居しているお姉さんが
現在お住まいの住宅および敷地を取得した場合には適用可能であると回答しました。
弟さんは同居ではないため、適用されません。

住宅取得資金の贈与制度については、
すでに所有物件をお持ちの場合で、新たに居住用住宅を取得した場合でも
適用がある旨をご説明しました。

ご相談者様の実情に合うことが重要

相続税の金額は、ご相談者様が考えているより
少額になるケースが総じて多いということができます。
相続の全体像を把握した時点で、
ぜひ一度ご相談になってみてください。

また、減額特例や非課税制度などによって税負担の軽減を検討する際は、
相続人様、被相続人様の実情に合う制度やタイミングを
適正に見極める必要があります。
相続専門税理士なら、高い確率でご相談者様にぴったり合う
方法や指針をお伝えできます。

今回のご相談者様のように
現状では問題点として把握していないことでも
ご相談いただいたことをきっかけに
意外な問題点や放置できないことなどが判明してくるケースもあります。

専門家の知見をご活用ください。

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