「名義預金」は相続税の対象になるのか?

タワーマンション節税を薦めているイメージ図

息子や孫の名義で貯蓄する「名義預金」が
相続税対策と誤認されていた時代があります。

そのため、名義預金は相続の際に申告しなくていいと
勘違いし、当局から「違法」といわれて驚くケースも少なくありません。

ご相談者様は、お父様から受け継ぐ「名義預金」などを
どのように扱ったらよいか正しく知っておきたいと、お越しになりました。

相続人本人名義の財産があるが
資金の出どころは父。
父が亡くなったらどうなるの?

ご相談者様はご自分名義の銀行預金と株式証券をお持ちですが
いずれも全資金を出したのはお父様であり、
どちらも手つかずの状態とのことでした。
「父が亡くなったら、これらは父の財産として
名義を父に書き換える必要が出てくるのだろうか」
というのが、最初のご質問でした。

「名義預金」も「名義株式」も名義人の財産ではなく、
そのお金を出した人の財産です。
そのお金を出した人が亡くなった場合は
相続税の申告書に記載する義務があります。

相続税の申告にあたっては、申告書に名義人の名前と金額等を記載するだけで、
口座の名義を相続人から被相続人に戻す作業は不要です。

今回のご相談者様は、お父様が続けてこられた名義預金や名義株式が
相続の対象となることを正しく認識しておられました。
しかし、お父様は「名義預金は相続税対策」と認識し、続けてこられたようです。
40年ほど前、お父様もご自身の父上から名義預金を受け取り、
その当時は贈与税も相続税も申告せずに済ませてしまったとのことでした。
実はそれが違法であること、現在は税務当局の調べが厳しく
脱税と見なされた場合のリスクが高いことなどについて
ご相談者様と共有し、ご納得いただきました。

今のうちに父名義でマンションを購入しようと思うが

タワーマンションを父の名義で買っておきたいご相談者様は現在、ご本人所有のマンションに家族でお住まいです。
そろそろ住み替えを考えるにあたり、
お父様の名義でマンションを購入し、そこに入居することを検討しておられます。

父名義のマンションに息子家族が賃料を払わずに入居することは
税法上問題があるのか」
というのが、次のご質問でした。
この点については、民法上の「使用貸借」と呼ばれる行為で、
認められている契約ですので、税法上もなんの問題もありません。

ご相談者様は、お父様名義のマンション購入による
「タワーマンション節税」の効果についても高い関心を寄せておいででした。
タワーマンション節税は、最近「タワマン節税」などと多方面で報道され、
注目を集めています。
過度な節税が問題視され、税法改正によって是正する流れにはなってきているものの
相続税については、今のところ直接の改正が決定しているわけではありません。

単純に預金を不動産に換えると考えた場合、
評価額そのものが購入金額より下がるため、
現時点では相続税対策として一定のメリットはあると考えられます。
マンションをお父様名義で購入するのも、預金を不動産に換えるという意味で
相続税対策となり得るとご説明しました。

名義預金で父名義のマンション費用を支払う場合

お父上がマンションを購入する際、その費用は
名義預金となっている相続人の預金から支払う予定とのことですが、
「資金をいったん父の口座へ戻すべきか」と、ご質問をいただきました。

客観的に、戻さなくてもまったく問題ないと考えます。
ただし、口座名義がご相談者様のため
税務当局が「子から父への贈与」と見る可能性がないとはいえません。
もしも問合せ等があった場合には、その預金が「名義預金」であり
ご相談者様ではなく父の財産であると
しっかり説明できるようにしておく必要があることを説明し、
ご納得いただきました。

名義預金の解釈を誤っていたり、間違った相続対策をしていたりした場合、
それを正しい方向にもっていくのは、非常に労力がかかります。
対策をするのであれば付け焼刃ではなく、
正しい知識の裏付けのもとにおこなわないと
意味がないどころか、思わぬ課税関係が生じることになりかねません。

また、税法もめまぐるしく変わっています。
自己解釈や自己判断で対応しようとせず、
今回のご相談者様のように、まずは専門家に疑問をぶつけてみることで
今後の方針が定まっていくと思います。

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