両親とも高齢で、医師は両者とも死期が近いとの見立て。 両方が亡くなってから、一度に 相続の手続きをするわけにはいかないのか?

両親の死を考えるのは不謹慎とお考えでしょうか?
相続専門税理士という立場からアドバイスさせていただくと
「決して不謹慎とは思いません。
むしろご両親がお元気なうちに、もしもの場合について
家族で話し合いを持っておきましょう」とお伝えしています。

今回のご相談者様は、ご両親とも高齢で
お医者様からは「覚悟しておいたほうがいい」と
言われているとのこと。
ご両親それぞれの財産の相続について
どう準備しておくべきか、ご相談にみえました。

先に亡くなりそうなのは父だが、母もすぐに亡くなりそう。
父名義の財産の相続手続きは必要?
母が亡くなってから、まとめて母の財産として手続きするのは問題あり?

亡くなる時期について、確かなことは誰にもわかりませんし、
ご両親が相次いで亡くなられた場合の相続手続きについては
税務当局がどのように反応するか予測するのは困難なため、
非常に微妙なご相談だと思います。

お父様が先に亡くなられたとしたら、
お父様名義の財産はお父様の財産として相続税の申告をすることが
妥当であろうと回答いたしました。
その後、お母様が亡くなられたら、お母様の財産について
相続税を申告するのが適当であると考えます。

このとき、税務当局が、先に申告したお父様の財産もお母様のものとして
申告しなおすよう主張してくることはまず考えられないでしょう。
なぜなら、その場合は先に納付したお父様分の相続税を
還付する必要が生ずるからです。

ご両親がそれぞれの名義で預金などの財産をお持ちの場合は、
亡くなられた順に相続の手続きと相続税申告をおこなうのが妥当でしょう。

生前贈与と相続税を比較すると?

このご相談者様の場合、2年前から奥様とお子様が
お父様からそれぞれ贈与税が非課税となる年間110万円以下の
生前贈与を受けているとのことでした。

近い将来、お父様が亡くなられた場合、相続開始前3年以内の
生前贈与はなかったこととなってしまうため
相続税がどれくらい発生するのかを心配しておられました。

生前贈与の金額を増やして贈与税を払うのと、
父が他界してから相続税を払うのとでは、どちらが安くなるか
とのご相談も受けました。

お父様の財産の合計金額を元に相続税額を試算したところ、最高税率は50%でした。
したがって単純計算では、贈与をした場合の税率が50%を超えなければ
生前贈与の額を増やして贈与税を支払うほうがメリットがあるとご説明しました。

ただし、これは現状での試算です。
お父様が長生きされ、実際に相続される際の財産が目減りした場合には
節税効果がなくなる可能性があることもご理解いただきました。

また、3年以内の贈与について相続税に課税しなおす制度の対象となるのは、
相続等により財産を取得した人だけです。
お父様の遺言がなければ、相続人(今回のご相談者)の妻、子は相続等により財産を
取得する立場にないため、この制度の対象とはならない旨もご説明しました。

祖父から孫への教育資金の一括贈与

ご相談者様は、生前贈与とは別に
お子様(お父様・お母様にとっては孫)の教育資金の一括贈与も
検討しておいででした。

30歳未満の子、孫に対し、教育資金として1,500万円までの贈与が
非課税となる特例を利用したいということです。

これについては、信託銀行等を通じお父様またはお母様ご本人の口座で
手続きをする必要があること、
一人の子、孫に対し、最大1,500万円であること、
贈与された子、孫が教育資金として使わない場合には贈与税が発生することなどを
ご説明し、適正なお手続きをおすすめしました。

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